火事現場の後始末についてのアドバイス
現場検証の途中、もう私は母の顔を直視できないでいました。
責めてしまいたい気持ちもあり、だけど可哀想に思う気持ちもあり、自分の気持ちがどうしようもないのです。
だけど、そんな中旦那がうまく私と母の両方に声をかえてくれていました。
私が、母のそばにいなかった時に、途中で旦那が母に声をかけたら、あの子達(犬)が可哀想だと堰を切ったように号泣し出したそうです。
犬は3匹、全員外飼いの犬でオスです。実は、家の中にはメス犬がいたのですが、そのうちの一匹の犬は火事の時に遠くへ逃げて行くのを母が見たらしく行方不明状態、そして、もう一匹の室内犬の子が庭の片隅で震えているのを見つけました。
ところどころ毛が焦げてしまっていたけど、大やけどを負っているようすもなく、ただ精神的ショックで動けずにいたようです。
母はその子を抱えて、また少し泣いていました。
そんな中、隣の別荘の持ち主のいとこのTおじさんとおばさんが離れた街から到着しました。
おばさんは、母の実の姉で、普段からかなり母を可愛がり、もちろん私のことも小さい頃から気にかけてくれている人です。
おじさんはあばさんの旦那で、自由気ままに生きている母をあまり良くは思っていなく、たびたび母とはぶつかってきたものの、私の事は気にかけてくれていて、私が家を出て一人暮らしをしていた頃から、一人で良く頑張っていると、唯一褒めてくれる人でした。
私達の所に来ておばさんは、母の無事を喜んでくれていたけど、おじさんはなんとも言えない顔をしていました。
もう、実の娘の私にもおじさんは冷たい態度をとるかもな、そうなっても仕方ないくらいのことだなと思いました。でも、おじさんは、消防や警察の人と軽く冗談話なんかをすると、「娘は連れて行っていいでしょう?」と言い、おまえは家に入って休みなと声をかけてくれました。
母の現場検証は旦那に任せて、おじさんの家に入ると、おじさんはもちろん、私を責めるなんてことは一切なく、遠くから大変だったなと言ってくれました。おばさんも同じように労ってくれました。
ひとまず、今後の事を話し、本当は一緒に暮らすのが一番なんだけどと言うと、おばさんは、「だめだめ。あのわがままは一緒に暮らしたらまた迷惑かけるよ。今度はお前とお前の旦那の仲が悪くなってしまう。」と言いました。
本当は、この別荘に住ませてあげたいけど、とにかくあの妹(母)は、犬を家に連れ込んでしまうし、なのに掃除もできないからゴミ屋敷にしてしまう。だからどうしても一人で住ませるのは難しい。でも、いつかこの人(おじさん)が死んだら、妹と二人でここに暮らすつもりでいる。
そんな話をしてくれました。それはいつも母が嬉しそうに言っている話でした。
だけど、これからはお前とお前の旦那がこっちに来た時は、自由にここを使っていいから。その代わり、お母さんが犬をつれこまないようにだけ監視していてくれ、そう言って家の鍵を渡してくれました。
その気持ちがとてもありがたかったです。
私が、母の娘であるから、母の不始末も自分の責任でもあると感じているのと同じく、おばさんも実の妹がしでかしたことだからと思っているんだなと感じて、ちょっとだけ心強く思いました。
そんな風におじさんとおばさんと話しこんでいるうちに、聴取も仕上げに入るらしく、旦那から呼ばれたので、また隣の現場に戻りました。
来た時に、色々と説明をしてくれた消防の隊長が、これからのことについて、今まで同じように火事を起こした人達はどんな風にしたかなどの話を織り交ぜて話してくれました。
まずは、この燃え跡の処理です。
きちんとする人と、やっぱりしない人とがいるということ。
もちろんそれは莫大なお金がかかるので、できなくても責められないし、法律で決まっていることでもない。ただ、そうした場合、こんなことが起こり得たりしたことがあるそう。
例えば、台風なんかで鉄屑が近所に飛んで行き、二次災害となり、それがまた新たなトラブルを生んでしまったこともよくある話だそうです。
どうしても時間をかけると、まあいいかと放置を選ぶ人が多いから、可能なら一週間や二週間以内に動いてしまった方がいいです、と隊長が言いました。
そんなアドバイスは、ありがたい反面、一般常識的にはそうなんだろうけど、とにかくお金が全くない母と私にとっては、常識だけを気にできない問題でもあり、それを聞いて更に頭を抱える問題だなと思いました。
「火事の後始末というものは、本当に色々とあるから、一年はかかるものです。」
その隊長が言った言葉がズンっと心に残りました。
そうして、4時間近い事情聴取が終わりました。
最後に、情報をまとめて読み上げてくれましたが、それを聞いてますます、我が家の火事ってのは、なんていう馬鹿げた火事なんだろうと思いました。
”犬が蚊取り線香をひっくり返し”
”普段からその犬が蚊取り線香をいたずらしており”
恥ずかしいくらいに、馬鹿げた現実でした。
次々と引き上げて行く消防隊員の人達にお礼を言ってお見送りをしました。
その中の一人の人が、「お母さん、気を落とさないでしっかりしてくださいね!」と母の肩を叩いて優しく声をかけていってくれました。
実は、その人は以前、うちで生まれた子犬をあげたことがあった人だったそうで、(私からすれば、引きとってくれた人)
母は、そうやってこっちもやってあげたから、こうやって縁があって返してもらえたんだなと言いました。
相変わらず、なんだその考え方・・・と思いました。この期に及んでも、母の性格はしょうもなかったです。
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