現場検証と事情聴取
朝、いとこのお兄ちゃんの奥さんが3人分のおにぎりを作って持ってきてくれました。いとこのお兄ちゃんが言ってくれたようです。
正直、食欲は全くなくても、こんな時にその気持ちはとてもありがたく、実際お腹は空いていたようでとても美味しくいただきました。
でも、母はやっぱり食べる気にもなれないらしく、一口齧って食べるのをやめました。
後で、味が美味しくなかったからと言う言い方をして、旦那に軽く怒られました。
そして、この日から忙しい日々が始まりました。
まず、この街に住んでいない私と旦那にはタイムリミットがあります。何より旦那も仕事を休んで来ているので、せいぜい一週間でなんとかできることを全部終わらせて、戻らなくてはいけません。
この日は朝の8時頃から、警察と消防署が来て現場検証と事情聴取が始まるようです。
結局、一睡もできなかったので、もっと早くに起きだしていましたが、母がすぐに家に向かいたいと言い出しました。でも、旦那は疲れていて、今日は長くなって疲れるだろうから今のうちに少し休みたいし、シャワーなども借りられるうちに浴びたいしで、結局は母の意見を却下して8時前くらいに向かいました。
すっかり日の光にむき出しにされた実家は、昨夜見たよりももっと火事の凄まじさを醸し出していました。
雨宿りすらできそうにないくらい、もう焼け残った残骸でしかありませんでした。
ゴミ屋敷状態だった我が家。物が散乱していて、母が色んな人からもらってきて、倉庫状態だった部屋の物もみんな燃え尽きていました。
実際、物が多かったから良く燃えたんでしょう。
圧倒されるような光景に呆然としている私を、放火魔の犬はひたすら吠え続けていました。
そして私達が到着するなりすぐに、警察と消防の人がやってきて、母を取り囲んで事情聴取が始まりました。
驚いたのはその人数の多さです。
警察の人が2~3人くらい、そして消防の人が10人くらいです。そして最後にスーツを着た人が二人。市役所の人でした。
「このたびは、大変でした。でもお母様が無事で何よりでした。」
みんなそう言ってくれました。
まず、消防のリーダーの人が簡単に説明してくれたのは、
今後の役所関係の手続きがかなりあって、消防署から出される罹災届けがかなり重要となり、何枚も必要になってくるということ。
それから市などからお見舞い金がいくらか出ること。
それらのために、現場検証と事情聴取は欠かせないということ。
あとは、この現場の後処理についても話してくれました。
ひとまず、市役所の人に、昨夜いとこのお兄ちゃんが話してくれた、臨時の住む場所について聞いてみました。
するとやっぱりそれはちゃんとあるようで、この後役所に戻って、なるべく早めに入れるように手続きをしてくれるということになりました。
それから、受けられる援助等もあるので、それもすぐに要請してみますとのことでした。
正直、いつもは大都市に住んでいるので、知らなければ教えてくれなかったり、困りごとがあっても何も勧めてくれないとか、役所に対してはそういうことが多かったので、役所側からあれこれ教えてくれるのは意外に思いました。
何か申請などをしても、何日かかりますとかそういうイメージだったのに、すぐに動いてくれるという事がありがたかったです。
田舎だからかもしれないけど、それでも地元の温かさを感じました。
火事に対しての知識なんて、はっきり言ってゼロでした。
まさか自分が、本当にそう思って、調べてみようなんて思いすらかすりもしないで生きてきましたから。それが、普通だと思います。
母の事情聴取については、付きっきりでなかったので、詳しくはわからないけど、基本的には事件性がないのかをはっきりさせるためでもあるようでした。
そして、なぜ昨日突然、いとこのお兄ちゃんの名前が警察から出てきたかと言うと、昨日の夜に日中何があったか聞かれて、布団をもらった件を話したからだったらしい。
警察からしたら、その布団に何か仕込まれていなかったかというのも”一応”疑っておく必要があるそうで。
そんなことは、身内からしたら1000%あり得ないんだけど、それでもそれが火事の事情聴取には必要らしいです。
だから、昨夜おじさんが俺が布団をあげたからだと落ち込んでいたんだなとわかり、本当に落ち込む必要のないことで、おじさんまで落ち込ませ、とんでもない巻き込みです。
他にも、最近誰かに恨まれることはなかったか、つまり放火の可能性はないのかを聞かれていたそうです。
まぁ、放火はまずないと思うけど、ここまで書いてきた少ないエピソードでもわかるように、母はとにかく自分中心の考え方の人物で、思ったことも心にしまっておくことができず、すぐに口にしてしまいます。
誰かに対しての陰口なんかも本当に多くて、何かと友人とも喧嘩別れをしてきたので、恨みを買っていても不思議ではありません。
だけど4時間近くに及ぶ検証の結果は、火元は母の言っていた通り、犬が倒した蚊取り線香で、火元も一致したという結果でした。
母がしつけもできず、自分の手に負えないくせに犬を増やし続けた結果です。
私の仕送りを全て犬に遣い、娘まで苦しめて、それでもまだ自分のおかしさに気が付いていないまさにアニマルホーダー。
そんな母に何度か注意はしたことがあったけど、すぐに喧嘩になったり、うざがられて電話を切られたり、そんなことばかりで強く言えなくなっていました。
まだ私が家に住んでいた高校生の頃までは、逆ギレさせて暴力も・・・そんなことまでありました。怖い、と言う気持ちもあったのかもしれません。
だけど、今はそれが後悔と言うよりは、こんなとことんなことまでしでかして、正直呆れていると言うのが一番近い気持ちです。
犬の事でお前に迷惑はかけない、いつもそう言い返してきた母。
でも結局、犬にかかるお金を要求されたことも山ほどあったし、この火事で、私のアルバムも、いつか懐かしく見ただろう小さい頃の思い出の品や卒業アルバムなんかも、唯一の財産だった一生物の着物も、全部燃え尽きてしまいました。
いや、本当はゴミ屋敷状態でもう見る気にもなれなかったので、とっくに犬によってぼろぼろにされていたのかもしれませんが。
だから犬だって被害者なのかもしれません。
自分の気持ちを書くと、とりとめがなくなってしまいます。
ちなみに母は、足腰が悪く、あまり長く立っていることが苦手です。
そんな母に消防の人は椅子まで用意してくれて、場所を移動して検証するたびに椅子まで移動させて母を座らせてくれて、こんな手間暇かけさせているのは母なのに、とてもありがたかったです。
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