火事のできごとと今から

火事のあれこれの日記

夜の中、火事の実家へと向かう。

レンタカー屋は、いつも借りているところには断られてしまったので、初めて借りるところでしたが、事情を話すとすぐに手配をしてくれて、もし期日を延長したいなら遠慮なく電話してくださいと言ってくれて、とにかくありがたかったです。

間接的に、これもまた助けてもらっているんだなと感じました。

 

車の中ではずっと、旦那となぜ、どうしてと原因を話していました。いくら話したところで、わからないけど。

何度かいとこ達から電話が来ます。その辺りでもう夜の10時近くになっていたので、火は消し終わり、消防車なども撤退したようです。

現地に今いると言ういとこのお兄ちゃんからは、ちょっともう住めるような状態ではないと聞かされました。

 

そして、警察に行ってくれたいとこも電話をくれて、今は母と一緒にいてくれていて、今夜はひとまず家に泊めてくれるとのことです。

そして、服にすすがついているから、もし途中でやっている店とかあったら、買ってきてあげて欲しいと言われました。

その向こうで、「いいよ。この服で過ごせるから」と母の声が聴こえました。やっとここで、声が聞けてまた少し安心しました。

 

「とにかく焦らずに来いよ。こういう時は、事故も起こしやすいから、何時になっても構わないから。」

いとこからはそう言ってもらいました。

母と話したい、理由も聞きたい、そう思ったけど、なぜか電話をかわってほしいと言えませんでした。

 

旦那も落ち込んでいます。

「今日、買ってあげた洗濯機かな?電気とかショートしてしまったのかな。俺が洗濯機、買ってあげなきゃ良かったのかな。」

原因はとにかく気になります。でも、あのゴミ屋敷じゃ、いつどこから火事が起きても不思議じゃなかった。なるべくしてなった気はする。

 

それでも母がとにかく無事であること。そのことだけが救いでした。もし、そうじゃなかったら、今頃会話すらできていなかった。

いつもは、好きな音楽をかけたり景色を楽しんだりして、あんな家でも地元に帰れることが笑顔溢れる道なのに、夜ってこともあるけど、景色なんて暗かったことしか覚えていません。そして、何の音もしていなかったです。

 

そのうちにいとこからもう一回電話がありました。

家について向こうの部屋でいったん休んでもらっているけど、かなり落ち込んでいる様子だと言われました。

そして、本人はいらないと言っていたけど、いつまでもすすのついた服を着ているのは可哀想だからやっぱり買ってきてあげて欲しいと。それから、靴もはいていないようです。

 

地元に着いたのはもう夜中の12時を過ぎていましたが、ドンキホーテが夜中でも開いてくれていたので、そこで数枚の衣類や靴などを買う事ができました。

そして、いとこの家に行く前に、いったん実家を見に行きました。

車を停めて、細い道を歩いて家に向かいます。それでもまだ、何かの冗談で会って欲しいと思いながら。

でも、家の入り口に着いて見えたのは、いつものゴミ屋敷状態のおんぼろの家ではなく、すっかり変わり果てた実家の姿でした。

もはや向こう側が見えるくらいに壁が燃え落ち、屋根と柱と燃えカスだけになっていました。そして、焼け焦げた匂いが充満していました。

見慣れた景色はもうどこにもありませんでした。

ショックではありましたが、不思議と悲しいとは思いませんでした。涙も出ませんでした。

相変わらず、外につないである母にしか懐いていない凶暴な犬が、凄い勢いで吠えていました。

 

不幸中の幸いがもうひとつありました。

家のすぐ隣に建っているいとこの別荘には、一切火は移らなかったらしく、何も変わらなく見えたことです。

 

よく見たい気持ちはあるけど、夜中で真っ暗だし、いとこの家で母も待っているので、5分ほどで切り上げました。

再び、車を停めてある場所へ戻ると、ちょうど消防員さん達が火が再び燃えていないか確認に来てくれたところでした。

挨拶をして、また車で5分ほどの距離にあるいとこの家へ向かいました。

 

到着するなり、いとこのおじさんが「大変だったな」と出迎えてくれました。

いつもは笑顔で出迎えてくれるおじさんも、初めて見る顔をしていました。

そして、おじさんと一緒に出てきた母が「大変なことをしちまったよ」と泣きそうな声で呟きました。

その家に住んでいるいとこの兄も出てきて、とにかく家にあがりなと入れてくれました。

 

あんな空気は、初めてでした。

悲しいとも違う、ただ重い空気。

これから、どうなるんだろう。どうしたらいいんだろう。

母のあんなに落ち込んでいる顔、小4の時におばあちゃんが亡くなった時のような、でもあの時以上に、絶望しているようなそんな顔。

直視できませんでした。

私達のこれからが何も見えないような、本当に夜のど真ん中でした。

 

 

 

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