火事のできごとと今から

火事のあれこれの日記

どこまでも自分勝手な思考

いとこの家に今夜は泊めてもらうことになり、家にあげてもらいました。

 

いとこのお兄ちゃんがやってきて、これからどうするのかと母にたずねました。

私は、一緒に来てうちで暮らそうと言いました。今残っている犬は、もらい手をなんとかして探そう。犬なら、私達のところにも実家から連れて行った子が一匹いるんだから、その子を可愛がってくれればいい。

でも母は、地元を離れたくない。この火事で怖い思いをさせてしまったあの子達をとても手放せない。と言いました。

あの犬達は、自分じゃなければ懐かない。あの犬達がいたから、生きてこられた。と。

この期に及んでもまだ犬なのかと思いました。

犬に対する愛情はわかります。私だって、愛犬をとても愛しているし、何があっても手放すつもりはない。それくらいの覚悟で家族として一緒に暮らしています。

でも、母の場合、度が過ぎているのです。ずっとそれに一番苦しめられてきたのは、私です。

これだけ、娘に心配をかけて、それでも犬なのかと思いました。ずっと私の心の奥に古傷として残っている、何年か前に言われた「お前は何もしてくれないけど、犬達は一緒にいて支えてくれている」と言う言葉をひたすら思い出しました。

「じゃあ、もう家もないのに、どうするの?」

すると母が答えたのは、駆けつけてきた私をどんどん突き放すだけの言葉でした。

 

”トランクルームなり、プレハブ小屋なり建てて、そこで暮らしたい。どうやら数十万で建てられるみたいだから。”

 

もう、何を言っているんだろうと言う感じです。

そもそも母は貯金はゼロだし、年金暮らし。数十万、そのお金だって、うちにしてみたら大金です。

その上、母は火災保険にも入っていなかったので、火事を起こしても本当に手元には一切のお金がないのです。

せめて、火災保険に入っていたら、あんなゴミ屋敷でも多少のお金はおりたんだろうけど。

 

旦那が口を開きました。

「それは無理だよ、お母さん。まずはあの火事の後始末をするのだって、これから凄いお金が必要になるんだよ。それに、こんな火事を起こしてそれでも犬とまた元通りに暮らしたいなんてありえないよ。」

いとこのお兄ちゃんもさすがに同意しています。

 

でも母はその気持ちを譲りません。「とにかく、あの子達がいなくなったら死んでしまう。」

その言葉を聞きながら、もうずっとこの人にとっての一番は私じゃなかったんだなと思いました。私って何なんでしょう。

もう、火事の理由からしてくだらな過ぎて、心が疲れきって何も言えません。

じゃあ、もう知らないよ。勝手に好きに生きて行きなよ!

そう言ってしまいたかった。

もし、そう言ったところで、ここにいる誰も私の事を責めないだろう。

でも、

それでも母を見捨てる気持ちになれませんでした。

だからと言って、優しい言葉も何も言えませんでした。

 

そこでいとこのお兄ちゃんがひとまずの案だけどと話してくれました。

火事に遭った知り合いがいて、しかもお兄ちゃん自身も以前少しだけ消防の仕事をしていたので、少しは知っていることもあったのです。

市の支援で、火事とか災害に遭って家を失くした人に、緊急で少しの間住ませてくれるところがあるらしいから、ひとまずはそこに移ればいいんじゃないかと言う案です。

とりあえず、明日すぐに市役所に確認しようと言う事で、今夜はもう遅いし寝ることにしました。

 

いきなりだったし、母と旦那と三人で雑魚寝です。

東京から持ってきたブランケットを母に渡し、ドンキホーテで買ってきた小さな膝かけをかけて寝ることにしました。

9月だったので、そこまで暑くもなく寒くもなくちょうどいい季節なのは幸いでした。

災害に遭って、家を失くした人達はこういう気持ちなんだな。避難所で寝るのは、こういう気持ちなんだなと思いました。

隣で横になっている母が眠れていないのがわかりました。

布団もないから、体も痛かったけど、寝返りを打って母に背中を向けるのも可哀想な気がして、だけど母と目を合わせる気にもなれず、ただ上を向いて目を閉じました。

 

私の写真も、大切なものたちも、みんな燃え尽きてなくなってしまったけど、母のこれからだけを考えました。

新しい家を建てて欲しいと言う母の希望、それを叶えられない自分の不甲斐なさ。

私も母との二人きりの生活に嫌気が差し、さっさと家を出て一人暮らしをして母を一人にしていたから。

一番自分勝手なのは、誰なんだろう。

 

結局、一睡もできませんでした。

 

 

 

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